矢野和男さんの『データの見えざる手』(第2章)

引き続き、矢野和男さんの『データの見えざる手』(第2章)を読み進めています。
水野裕識(みずの ひろのり)です。

2章テーマは、”ハピネスを測る”です。

50%遺伝的、10%は環境要因、残り40%日々の行動によって決まるそうです。
幸せは、日々積極的に行動を起こすことで得られるようです。

ハピネス研究の第一人者、ソニア・リュボミルスキ教授の研究を引き合いにして、
今を耐えて、未来にきっと訪れる幸せを得るためにという昭和感たっぷりの心がまえではなくて、
日々のちょっとした積極的な行動で得られるようだ。

指示されて行動するのではなくて、自ら行動するために、技術がどう支援できるかと説く。
確かに真逆の考え方である。幸せだと感じるためには、少しの行動を起こせばいい。

仕事ができるビジネスマンは、幸せであると、
幸せなビジネスマンは成功しているのどちらか。

著者の結論は、後者のようである、面白いことを見つけ出す。

心の充足・幸せだといえることが先であって、そういう状態にあれば、仕事もうまくいくとなる。
よって、会社の業績を上げるために、社員一人ひとりが幸せだと感じることができればよいとなる。

そこで、幸せを感じているかどうかを測定するために、矢野さんのセンサー技術が登場する。

共同実験で、良かったことを紙に書いた群は、幸福度があがり、組織への帰属意識が高まったそうである。
その結果は、加速度センサーデータに現れていて、身体活動の総量と相関がみつかったそうだ。

つまり、本人が思う幸せは、普通は個人の内面のことだから、他人からはわからないと思われたが、
じつは動きとして計測できるのだ。よく、そんなことが分かったものだと感心します。

幸せを感じるようになると、活動量が増える。
仕事をしていても、この人なんだか、熱い人だなとか、情熱を持った人だなと思う方にお会いすることがある。
熱い状態にいるので、身体の活動量(動きが増える)が増しているのかもしれない。

人と会話をしているときの運動量が多い人は、積極的に問題解決をする人と相関があるそうだ。
前者の状態を観測していれば、後者の特徴を持ったひとを、ピックアップすることができる。
さらに、1万以上のデータに潜む特徴量の相関を見つけ出そうとされている。

その相関パターンが明確になるにつれ、今いる人同士の最適な組み合わせや、これから採用しようとする人の
特性まで踏まえた、新しい組織構造を自動で提供することができる。AIのほうが、はるかに組織のことを知っている
可能性がでてくるという印象を受ける。

最初は試しにAIシステムの言う通りに実践をして、センサーの状態を継続してモニターし続ける。
さらに、AIは新しい仮説を作り出して、個々の人に提案もするだろうし、上長にも人の配置提案もできるだろう。

コールセンター、開発現場での検証結果を報告されているが、その詳細は本書をお読みになることをお勧めする。

メール、SNSでの情報共有が格段に進んだこの25年。
隣の席同士でも、SNS経由でランチのお誘いをしあっているという、笑い話。
過度にITに依存しすぎている人も多くなってきた。
そう思うと、その逆の視点が抜け落ちてしまっているのかもしれない。
(昭和の仕事はどう進んでいたのだろうかとすら思う)

ひとはコミュニケーションの動物で、対面で話をすることで、理解がすすむ。
動きは伝搬しあうという。心理学の同調、ミラーリングも、センサーでわかるのだろうか。
(うつは周りにうつるんだよという話もある)
人同士の対面で向き合えば、活動が相互に伝搬をして、影響を与える。

要因因子とパターン、そのバランス・組み合わせとして、理解がこれからのようである。
それが分かるにつれて、
個人として幸せをえるために、自然にその行動が誘発されるようなアドバイス提供サービスは、価値があると思いました。
ただ、分かっていてもできないんだよねとか、そうしたいんだけど、うまくいかないんだよねという人は多いと思います。
一方で、そう簡単にもいかない気もするし、でも明らかにしたい気持ちもとても理解します。
いずれにしても、この2章もたいへん勉強になりました、矢野さん、感謝です。(多分ブログ見てないだろうけど)

追伸
データの見えざる手というタイトルは、アダムスミスの神の見えざる手からきているのかと今分かった。
なるほど。

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