「閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済」を読みました

こんにちは、毎日、暑い暑いと汗をふきながら、お客様先を廻り続ける水野裕識です。

水野和夫さんの最新著書、読みました。面白いです。勉強になります。水野さんは、これからの日本の方向性を提示してくださる論客ですね。今回は前回の著から、さらにパワーアップした印象をもちました。

ずばり、閉じた帝国の主張を述べられています。グローバリゼーションの終焉、有限な地球、1600年から外へ外へかき集める時代の終わりを、いろいろな角度から説明を行っています。

1970年までは国家が資本主義を抑え込むことができたが、それ以降は、資本主義が国家を凌駕し、資本をかき集める方向に向かいすぎてしまい、その先が見いだせなくなった。超低金利2%以下は、その1つの証左であると。

イノベーションを成長戦略の柱に据えても一向に成功しないのは、「技術」が政治によって「より遠く、より速く、より合理的に」貢献するよう求められいるからです。「貨幣さえ増やせばインフレ」教がそうであったように、イノベーションによって経済成長すればデフレや財政赤字が解決できると考えるのは、市場が無限に拡大する、すなわち「作れば売れる」という「セイの法則」の呪縛にとらわれているからです。(p64から抜き出し)

「より遠く、より速く、より合理的に」の考えがそもそも様々な条件において適合しなくなったという。その真逆の「より近く、よりゆっくり、より寛容に」の方向が正しいのではないかと仰っています。

超少子高齢化が急激に進む日本で、これまで通りの経済成長拡大路線、成長戦略を唱え続けることは、まさに反対車線を走らせているのではないという感じもしました。まずは、「定常状態」をいかに作り出すのか。そのためには経済圏を閉じて、その範囲内で安定した状態を作り出すことを目指すべきではないかという提言は、(まだ納得しえない部分は残るが)そうなのかもしれないと感じられました。日本・独は、過去の資本の蓄積が十分にあるようなので、その資本を使うことで、閉じた経済圏・閉じた帝国に緩やかにシフトするという方向を見いだせるものかどうか。

日銀の総裁任期は、2018年春であり、今後1年以内に今の政策が変わる可能性はありえます。発行する大量の国債をすべて日銀が買い取る財政ファイナンスが続けられるとも思えないので、方向性の見直し、場合によっては方向が大きく転換する可能性はあります。壮大な実験(2%成長まで国債発行・買取)の終了を告げるかどうか、次のステージをどこに見出して導こうとしているのか、一国民として注視していかなければならないと思いました。

とにかく、全部で270頁に及ぶ主張で、その内容も多岐にわたり、盛りだくさんです。何度も繰り返し読んでおきたい1冊であることは間違いなさそうです。これからの著書も、楽しみに待ちたいと思います。