生体情報のビッグデータが教えてくれること

2024年10月12日、朝晩少し肌寒く感じられます。
水野裕識(みずのひろのり)です。

ウェラブルデバイスによる見える化から何か新しい兆候を捉えようとする動きはあるでしょうか?
スマートリングOura v4 を世界同時投入してきました。全世界250万台の販売数を伸ばしてきています。
睡眠を測るデバイスにおける性能の高さをさらに優位とする主張を展開しています。睡眠トラッカーとしての精度が高まっていることをこちらの記事から確認することができます。睡眠測定のゴールドスタンダードである睡眠ポリグラムによる検査専門技師による睡眠段階の一致率が83%に対し、Ouraリングは79%と4%及ばなないことを示しました。

世界中の睡眠データが積みあがってきているわけです。30億回の睡眠を分析するのに、どのくらいの年月を要するでしょうか。仮に1日の医師や技師が、100人睡眠分析をしたら年間3.6万人です、8.3万年の分析を機械学習で行っていると考えると、そろそろAI学習の精度が超えてくるかもしれません。ビッグデータの価値は、大量に集まった時に専門家の判断を超えてくる形で発現してきます。(囲碁・将棋もそうだった)

スマートリングOuraが、皮膚温測定は1分に1回行っています。体温は普通、深部体温をいうのだから、口腔内や脇下温度をはかるのが一般的です。これは医学では常識だと思います。そして、1日に1度基礎体温をつける若い女性も多いでしょう。

これと何が違うのでしょうか?スマートリングOuraは、1日1440回の皮膚温を測定するわけです。低い外気温に居たり、サウナに入っているときも測り続けるわけですが、これらはそれまでとは違う大きなズレとして外してしまえばよい、1440回の外れ値としてみなせばよいだけとラフに捉えます。1回の温度測定よりも、むしろ、常時測ている点に優位を見出します。トレンドが見えてくるということです。測定という負担を意識させることなく、女性の周期判定、コロナの発熱症状の事前予測などにつながっていき、ここでもビッグデータの優位性を活かしたアプローチが、世界で進んでいます。

Ouraがその他測定しているデータは、生理学的なデータであるということです。

その時の感情や外界に直に影響があるものではないのです。あくまで体内の生理的な状態をセンサーで計測しているのです。大量に意識させずに利用者に不便をかけることなく集め続けています。この24時間体制の測定と、その時々のデータに意味を与えていくときに、見えてくる大きな世界こそが、ヘルスケアの分野における興味であり、この外れ値も含めた、連続大量データの意味付けにこそ、ヘルスケア分野の方達は、もっと目を向けるべきでしょう。なんとなく気分が悪い、疲れた、熱があがる前の兆候や生理学的な変化にこそ、注目できるということになります。

なんとなく気分が良くないなんてことを評価できるデバイスがかつてあっただろうか?そんなものは寝てれば治るくらいで一喝されて過ごすくらいだったと思うが、そのなんとなく・・・・に注目し、時系列で追いかけて、長年データを集め続けてそれに意味をつける。

ヘルスケアの考えが浸透し、健康寿命が平均寿命に近づいていくようになれば、若い時から健康を維持するための様々な知見も積みあがっていく。一部そうなりつつあるかもしれませんが、生涯にわたる生理データも集め続けたとき、それらを集合的に扱うことで、そこから導かれるいまだ知られてない健康維持に向けての情報の構造・原理を導くことに、予算をつけていくことも、ヘルスケアを進めるにあたって、大事なことのように思います。

次回は、世界で2万人のOuraで測ったデータ(体温)と、鬱の関係性について最近読んだ論文を引き合いとして説明したいと思います。

 

Oura活動量(1分単位のMETS値)からの意味 その2

2024年7月中、蒸し暑い日々が続いています。水野裕識(みずのひろのり)です。

Oura活動量(1分単位のMETS値)の意味を見つけたので、報告したい。

センサーからのデータは、どこまでも間接的であり、データのなかに何かを意義・意味を見出さななければならない。その程度の情報量の解像度でも、意味が見出せるなら、それが価値につながる。ここが大事なんだが、データに意味付けするのは後天的だから、当たり前だが、一般には乖離している。

少し分かりやすく言えば、例えば、このセンサー情報は、こころの状態を測ることができるかに応えきれるか、この課題は、なんでこのセンサーで見えるのか、何で解決できるのかを応えるなければならない。

3D加速度センサーを単なる連続的な数字に何をどのように見いだせるのかについて、深く考えてきた。技術として測定できた数値データをどのような意味を見出して上位層と連結しえるかを議論すべきと考える。

Ouraメッツ値は1日1440回得られる。

24時間365日の身体の動き情報はどう表現できるのか、その1つの表現として、この前のブログ記事として説明した。

行動タペストリーは、色が付いたグラフ表現として美しい。現れるパターンや模様から何を意味として感じとることができるだろうか。パターンを訓練をさせて、AIで推論すれば良いかもしれません。

縦軸に1日あたりの1分METS値を累積数(橙線)を示す。

下限値は限られていて、1750程度。上限は、1週別に跳ねるが、運動量に比例していることがわかる。

Ouraの1分METS値の累積数グラフ

Ouraの1分METS値の累積数グラフ

青線は、10日平均線です。ここで青線の振動しているように見えるが、大きく上下しているわけではない。さらに緑線は、30日平均線。

この間の累積値の平均は、ほぼ2000である。

Ouraの1分METS値の累積数グラフ

Ouraの1分METS値の累積数グラフ

これから、捉えたい実践すべき内容は以下の通りである。

①アスリートのグラフは、このピークの跳ねた日付がさらに大きく増える。平均値は高くなる。アスリートの怪我を予防するためには、行動数量から何か分かるものだろうか。

②行動障害(例えば鬱)になると、行動量は低下する。行動障害が起きる前の行動数量から何か気づけることがあるだろうか。

③高齢者の累積平均値は下がる。年齢と、性別で、どこで、どのようにグラフが上下するのか、他の睡眠の状態とも合わせて、フレイルの状態について何か分かるだろうか。

このような傾向が分かるとしたら、自治体の方や、様々な協力頂ける皆さまと一緒に確認させていただきつつ、最終的には自分自身の状態への振り返りにつなげていけると考えている。

おそらく、数年のうちに、AGIとともに社会変化が大きく起きるこれからの時代において、自身で今の状態を知り、ヘルスケア対策として、これからの自分の身体、心を守ることに使われるべきであり、きめ細かく対応していけるべきではないかと考えている。①②③の連携については、水野(hm@bbjpn.com)までお願いします。

 

Oura活動量からU分布(METS値)を意味を理解してみる

2024年初夏、今年も暑くなりそうですね。水野裕識(みずのひろのり)です。

1日の身体運動の分布は、U分布に従うことを、矢野さんは示された。

Ouraリングの活動量を使って、このU分布に従うかどうかを確認してみたい。約半年間の行動タペストリーを表示する。これは1分単位のMETS値の塊となっている。

MET値のグラフ表現

MET値のグラフ表現

人の行動は、活動的な人でもそうでない人でも、U分布に律速されるということであった。この行動タペストリーから、MET値の出現確率を求めて、横軸METS、縦軸に対数として表現した。これは、U分布に見えるのだが、いかがだろう。

MET値と出現確率の月別グラフ ほぼU分布

MET値と出現確率の月別グラフ ほぼU分布

普通の生活をしていて、激しい動きをし続けるなんてことはないわけだから、高いMET値が多く出てくることは想像してない。15以上METSが急に垂れるのはそういうことだ。月別に表示しているが、どの月も馬の背中からしっぽのようなグラフになっている。

運動強度とエネルギ消費量

テレビを座ってみることや車に乗ることは1.0メッツ、座って会話や食事、デスクワークは1.5メッツ、料理や洗濯、着替え、洗面、シャワー、家の中を歩くなどは2.0メッツ、ウォーキングや掃除は3.0メッツ

日常生活においては、この程度の動作がほとんどを占めるのだろう。2.5メッツぐらいまでを拡大してみる。

MET値と出現確率の月別グラフ 2.5まで

MET値と出現確率の月別グラフ 2.5まで

1.1にガクンとする箇所がある(この左側は睡眠(約0.9METS)の横になった領域で、右側が日中の行動領域と思う)は、月別のラインはほぼ近い曲線を描いている。2月3月4月の曲線が他の月を下回る。時に2月の曲線が一番下にあり、1以上のMETSの動きが制約を受けている。

これは何を意味するのか?本人に尋ねると、2-4月は開発への対応が大変だったらしく、椅子に座り続けた生活であったそうだ。つまり、椅子に座り続けることは、高いMETSは、ほぼ現れにくい状態であったということになる。

5月に少し解放されて、6月はほぼ解放されたという表現からも、水色(6月)のMETS値が一番上にきている。このことは、身体の動作にも表れて、このグラフの結果が得られていると思う。

この直線やカーブを一人ひとりの動きの個性と捉え、動きの平均や分散から逸脱していたら、それに意味を与えることができるのだと思う。行動障害(鬱)になると行動が非常にゆっくりとしてしまうから、データをみつづけてあげることで、行動分類に使えるのではないか。

つぎに、非活動時間を見てみよう。

月別 非活動累積時間

月別 非活動累積時間

4月(水色)が群を抜いて非活動時間が累積している。4月は椅子に座っている時間が非常に長かった生活と推測しえる。ついで2月3月も高く推移している。

一日の時間は誰もが24時間。そのうち、仕事時間が伸びれば、その他の生活時間を短くせざるを得ない。かつ、椅子に縛られている時間が長いということは、本来U分布に従うべき、様々な行動がとることができないわけであるから、自由度がない状態としてこの期間を過ごしたということになる。

この方の場合は、非活動時間が長く(仕事時間に比例すると考えられる)、その他の生活時間である睡眠時間への影響もあると思うが、その評価は次回検討してみようと思う。

今回はOuraで取れる1分単位の行動量から推定されるMET値が、U分布に従っていそうだと理解ができた。