芥川龍之介 侏儒の言葉・西方の人 運命は偶然よりも必然である。

芥川龍之介 侏儒の言葉・西方の人の一節に『運命』の下りが2節ある。

運命は偶然よりも必然である。「運命は性格の中にある」と云う言葉は決して等閑に生まれたものではない。

 

運命はみずからと外界とのやりとりを通して、作り出せるものであるという点において、大いに心強い。

遺伝、境遇、偶然、-我々の運命を司るものは畢竟(ひっきょう)この三者である。自ら喜ぶものは喜んでも善い。しかし、他を云々(うんぬん)するのは僭越である。

遺伝は致し方がないところであり、あきらめにも似た境地になる。

境遇とは、置かれた状況ということであるから、環境に依存をしている話であり、自分との接触を増やすか、減らすか、あるいはまったく異なる別地に移してしまうかの主体的な部分を残している。

そして、最後に偶然となるわけだが、このたまたまということそのものも、自身の性格から導かれる必然と言い放つあたりは、まさにマスターの深い言葉と思う。

起こるべくして起こるわけであるから、あなた(自分)の対処にかかってくるということになる。