ウェラブルセンサーやパッチによる熱中症の予防やモニタリングの研究

熱中症予測パッチの可能性について、ウェアラブルセンサーやパッチは、熱中症の予防やモニタリングにおいて大きな可能性を秘めています。熱中症予測パッチの現状と可能性について調査しました。
非侵襲的で継続的なモニタリングについて
汗は、タンパク質から代謝物、薬物に至るまで、豊富な分子情報を提供できる有望な生体液です。ウェアラブルセンサーは、皮膚から汗を非侵襲的かつ継続的に収集・分析できるため、リアルタイムで体の生理学的情報を把握するのに理想的です。
従来の熱ストレスモニタリングは集団ベースの測定が主流でしたが、個人に特化したアプローチが不足していました。ウェアラブルデバイスは、心拍数などの非特異的な物理的変数に依存しがちでしたが、汗の分子分析により、より詳細な情報が得られる可能性がある。
バイオマーカーの特定とモニタリング
ある研究では、健康な参加者を対象とした研究で、様々な熱ストレス条件下(周囲温度の上昇、相対湿度の上昇、運動、防護服着用)での汗のプロテオミクスおよびメタボロミクス分子シグネチャーが調査されました。
これにより、アミノ酸、マイクロバイオーム代謝物、タンパク質など、複数の候補バイオマーカーが特定されました。これらのバイオマーカー候補は、様々な熱ストレスを代謝的に区別し、急性モニタリングを可能にする初めての成功したアプローチであると考えられています
特定された主なバイオマーカー候補には以下が含まれます。
トリプトファン (Tryptophan)
急性熱ストレス下での変化をモニタリングでき、低・高熱ストレスの区別、環境的熱ストレスと能動的熱ストレスの区別が可能です。
トランス-3-インドールアクリル酸 (trans-3-Indoleacrylic acid)
トリプトファンの代謝物であり、全ての熱ストレス要因とほとんどの訪問段階を区別できる可能性がある。
ジペプチド(leu-leu、leu-phe)
熱ストレス要因間および訪問段階間の有意な識別が可能。
シトルリン (Citrulline)
深部体温(CBT)と負の相関を示した唯一の代謝マーカーであり、CBTの解釈に役立つ可能性がある。
テストステロン (Testosterone)
環境的熱ストレスと能動的熱ストレスを区別する上で良い指標となりました
フィブロモジュリン (Fibromodulin)
様々な訪問段階での熱ストレスの変化をモニタリングでき、特に運動時によく機能しました
ウェアラブルデバイスの具体的な機能
「ウェアラブル微小流体バイオセンサー」に関する研究では、全身の汗の喪失、発汗率、ナトリウム濃度、ナトリウム喪失を継続的に測定できるウェアラブルデバイスが開発された。
このデバイスには、皮膚温度、熱流束を記録する2つの温度センサーと、活動レベルをリアルタイムでモニタリングする加速度計が搭載されています。
重要な機能として、触覚モジュール(振動フィードバック)が搭載されており、一定の汗喪失閾値(例えば、500 mLの汗を失うごと、または体重の2%の純粋な水分喪失)に達すると、装着者に通知します。これにより、脱水や認知機能低下のリスクに関連するリアルタイムの汗喪失を知らせ、熱中症の早期警告として機能します。
*まさにこれができたらいいなと思っていたところです。
https://www.nature.com/articles/s41746-025-01466-9?fromPaywallRec=false
データはデバイスのメモリに保存され、スマートフォンやクラウドポータルにBluetooth経由で自律的に送信されます。これにより、個人レベルだけでなく、集団レベルでの水分補給や生理学的洞察を得ることができ、健康安全担当者が対応できるようになります。
今後の課題と展望
熱中症予測パッチの可能性は高いものの、実用化にはいくつかの課題があります。
臨床的価値の確認と多様な集団での研究
特定されたバイオマーカー候補の臨床的価値を、より多様な年齢層や併存疾患を持つ人々を対象とした臨床研究で確認する必要があります。
実生活環境への応用
研究室の標準化された設定から、複雑な実生活環境での応用へと移行する際の課題があります。
汗サンプルの信頼性向上
発汗率の変動、汗の蒸発、古い汗との混合、皮膚の汚染物質による汗組成の変化などを最小限に抑えるための対策が必要です。
効率的なエネルギー利用
ウェアラブルデバイスの電力消費は大きな課題であり、リチウムイオンバッテリーの代替や、太陽光、身体の動き、体液からエネルギーを収集するデバイスの統合が求められま
低濃度分析物の検出
ホルモンやタンパク質など、汗中の濃度が低い分析物を高感度で検出するためのセンサーの改良が必要です
安静時の発汗刺激と収集方法の改善
安静時でも十分な汗を非侵襲的に収集できる方法の開発が重要です
統合とインテリジェンスの向上
化学センサー、電気生理学的センサー、物理センサーを統合した多機能ウェアラブルセンサーのさらなる開発や、機械学習や深層学習に基づく高度なデータ処理アルゴリズムの統合により、迅速かつ正確なデータ分析と予測が可能になる。
これらの進歩により、熱中症予測パッチは、個人の健康管理、労働安全衛生、アスリートのパフォーマンス管理において、熱ストレスへの曝露を管理するための重要なツールとなる可能性がある。

The molecular signature of heat stress in sweat reveals non-invasive biomarker candidates for health monitoring

https://www.nature.com/articles/s41746-025-01466-9?fromPaywallRec=false

Wearable and flexible electrochemical sensors for sweat analysis:

https://www.nature.com/articles/s41378-022-00443-6

微量の汗を正確に連続測定可能、発汗量や速度を視覚化できるウェアラブルパッチを開発 筑波大学

https://sndj-web.jp/news/002876.php

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