ふるさと納税が年々盛んになっているという。東京都のケースは、2017年は208億が地方に回っているということらしい。本来居住地区、住んでいる場所への納税であるべきものが、見返り品欲しさが先行する形になっていると区長が不満を伝えている。
ふるさと納税が行われた東京都23区のうち、世田谷区30億、港区23億、渋谷区14億だそうだ。逆に、ふるさと納税による税収が増えたのは、宮崎県都城市42億(人口16万人、+2.6万円/人)、静岡県焼津市38億(人口14万人、+2.7万円/人)、山形県天童市32億(人口6万人、+5.3万円/人)となっている。
そもそも、この構想は、平成 18 年 福井県知事の「故郷寄附金控除」 導入提案から始まったようである。地方で育った子供らが、成人になると、都市部に移動し、退職後は地方に変えるというある意味矛盾した状態に一石を投じたのだろう。その後通常国会を経て法律となり、平成20年に取り組みが開始された。本来は、居住地区の行政サービスからの受益者負担が原則のはずであるが、都市部から地方へ税が還流されるようになり、今度は都市部の長が、クレイムをつけはじめたようにも見える。
では、住民税の総額は一体いくらであろうか。総務省サイトから、1兆2000億円とわかる。まだ総額の1.7%しかふるさと納税は利用されてないわけである。(集計中とのことであるが、2015年度1653億円、2016年度は3000億を超えるという予想が出ていることから住民税25%に及ぶ。これはキャズム16%を越えたとみえるので、2017,2018年に大きな流れを作りだすことだろう。)大枠、都市部から地方への還流ということは間違いないわけで、今年はさらに勢いづくであろう。そもそも、都市部に移動した人口と、その遺失利益が計算できるならば、わざわざふるさと納税などというものを行う必要があったのだろうか。交付税の見直しなどで十分対応できたのではないかとも思える。
そもそも人ひとり成人が生きていくには年間どの程度かかるものか。都市部と地方では違っているとは思うが、最低でどのくらいあれば、生きていけるのか。子供の貧困度があがっているとも聞く、6人に一人の子供が貧困だとも言われる。地域や年齢によって、かかる費用は違ってくるだろうが、国家としてその程度のことは、当然ながら把握していないのだろうか。とある都市で暮らすのにかかる費用もわかっているのではないか。(話は飛ぶが、このような制度設計こそ、人工知能に行わせたほうがよっぽと良い解答を導くのではないだろうかとも考える。)
そもそも、育てたひとが都市部に移動した本来得られるはずの税が遺失しているという主張であるならば、人口動態をきちんと把握したうえで制度設計をするべきとも思う。数年前に突如として現れた制度が、このような基礎的な検討もないまま進めているのだとすると、ほころびは意外にも早く出てくる可能性があろう。
ふるさと納税をこのまま推し進めるのであれば、地方の何らかの指数・指標が数字で表されていて、分かりやすい形で、この地方を助けるべきだというのが分かるようになっていれば、その地域を全国の人で手助けをするということはできないものだろうかとも思う。
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