生産性の議論 その2

一人の生産性を上げることが、鍵であり、来年以降はこの生産性をいかに上げるかの議論が沸き起こるのだと思う。製造業のカイゼンは、世界に広く知られるが、ホワイトカラーにこの生産性をどのように理解し、良くしていけるのかはまだ分かっていないと思う。

昨日のNHKスペシャルでも働き方について多くの疑問が投げかけられていた。経営者の硬直した考え、とくに年配経営者の困惑がみられた。若い時分に猛烈を叩き込まれた世代に、時短というだけで早く帰すことが何がどうよくなるのかといったところだろう。俺たちのころは・・・話。

町工場の経営者は、タイトな納期を守らなければ、次の仕事がなくなるとも言っていた。その頑張りがあると、仕事がなくなったときに、仕事を融通してもらえると。リクルートワークス研究所の石原直子さんは、そもそも時短すらできない企業の生存価値にまで言及をしており、なかなか手厳しい。お客様は神様だと刷り込まれたものは、お客様の要望にできるだけそう動き方を訓練されている。だから、顧客の要望の達成には、何が何でもと思う日本人はまだ多いのだろう。誰かも意見をしていたが、顧客を選別することも必要なのだとも感じ取れた。

開発会社SCSKの人事部長が、生活の一部となっていた残業代を会社がボーナスに回す制度を行ない、早く帰宅した部署・人に大きく支給される制度を行った結果、平均の残業時間が大きく下回り、会社の営業利益も右肩あがりになったと伝えていた。開発の手戻りが、時間を奪うという、その結果、残業時間が予想以上に膨らんでしまうことを見つけ、この手戻りをいかに抑え込むかに取り組んでいる説明がなされた。経営層が考えて、行動に移している点が素晴らしい。中小企業がそのまま活用できるものだろうか。人事部長は、時間が有限であり、すべてに制限時間を設けるという新発想に立つことが大事と述べられた。

KDDIの国際部所属の女性の例では、海外とのやりとりで朝方まで働くことが求められているとのことだが、翌日の出社時刻までの時間を11時間と取ることで、心理的な負担が削減されたようだ。たしかに、夫婦そろって、7時ころに帰宅できるならば、次の子供を考える余裕が生まれることだろう。40~50代は、親の介護が必要なひとも増える。部署ごとに、会社ごとに、時間的な余裕を見出して、それを活かすことが求められている。

すべての職種に、時短法は使えないようにも思うが、世の中の動きとしては、確実に求められているようだ。売上を下げずに、上手に時短を行う方法について。時短の方法は、1つだけではないだろうし、みなで色々な工夫を行い、みなで社会的に情報を共有しながら、前に進むよりないのだろうと思う。働き方改革という名のもとで、今後いろいろと情報も出てくることだろう。あまり進まないようであれば、労働時間を法律で縛ることも起こるのかもしれないと思った。

これからの働き方について、いろいろなことを考える端緒についた感じがします。

参考:有給の消化率が極めて低い理由

生産性の議論

前回ブログで日本の労働人口一人あたりのGDPランキングは26位と理解している。イタリア、スペインを下回り、かろうじてギリシャの上にあるポジションである。要は、メディアがいうほど、生産性は高くないのである。GDP=人口×生産性で定義され、人口が多い国はGDPが増える。中国のように人口でGDPを押し上げてしまう国と比較することよりも、『1人あたりのGDP』で比較することが必要だと考える。

東京駅丸善を定期的に物色しているが、折しも生産性に関する書籍が2冊山積みされている。デービッド・アトキンソンの新・所得倍増論と、伊賀泰代の生産性である。デービットアトキンソンさんは、著名なアナリストであり、伊賀泰代さんは、ペンネームちきりんでブログの発信もいつも興味深く拝見している。両氏ともに、生産性というキーワードが、つぎの日本が真剣に向き合うキーワードであると伝えている。

メディア・放送番組などはバイアスが思い切りかかっており、日本人の素晴らしさや技術が世界一、日本人がかくも××であるという喧伝について、ぶった切ってくれる辛辣な言葉が並ぶのは、痛快である。アトキンソンさんの主張は、1人あたりに注目をし、比較説明をされる。一人あたりGDP(26位),1人あたりの輸出額(44位)のランキングを理解するべきだと。一人あたりで比較すると、いまの日本が以下に落ち込んでしまっているかを理解できる。

一人当たりの生産性を上げるには、一体何をしたらいいのでしょうか。まずは生産性の定義ですが、生産性=得られる成果/投入資源であらわされるので、『少ない資源で成果を大きくしましょう』ということになります。同じ価値・金額を稼ぎだすのに、残業を100時間、200時間もかけないで、それこそ残業を全くしないでその価値・金額を創り出しましょうといいかえられます。

日本の産業構造は、サービス産業が6割(金融保険含)である。製造業は2割を切ろうかというところです。人に対しての何かしらのサービスにおける生産性を上げるといっても、なかなか難しい課題と思われる。ここにきて、百貨店の定休日が増えたり、ロイヤルホストが時短に向かうのような対応が見られてきた。そもそも売り上げが下がっている分野に高人件費をかけてサービスを継続する意味はない。伊賀本のように、投入資源(時間)を短くすることは方策の1つであるし、アトキンソン本のように観光立国で外貨を稼ぐモデルに移行することは、分子の成果をあげることになる。今年は海外からの旅行者は、2400万人に届くらしい、さらにオリンピックに向けて増加して4000万人という目標も、それを後押しするのだろう。

いずれにしても、それぞれの事業において、その仕事の進め方、仕事の特徴、性質を見出して、改善をしていくよりない。アトキンソンさんのご指摘の研究開発費による非効率さ、サービス業におけるIT化の遅れ、農業分野の一人あたりの総生産の低さ、女性に甘い日本経済などについては、読み進めるなかで、何をすべきなのかを少しだけ分かった気になった。私たちの世代が日本組織の中核を担っているのであるから、もっと大胆に新しいことに挑戦していくべきではないのだろうか。

東京の人口もすでにピークを越えた。これから急激な人口減少社会に入っていくなかで、いつまでも昔の発想で対応しているようでは、何もうまれないと思う。できるだけ、みなが疲弊しないように過ごしたい。そのために新しい価値観(できれば数字を伴い合理的判断の根拠を伴う)で説明をして行動していくことが求めらる。

参考)出生数が100万人を切りました。東洋経済:人口自然減10年連続、ついに出生数100万割れ