超マクロ展望世界経済の真実(水野和夫、萱野稔人)を読了

2013年3月末に発売された、経済学者水野和夫氏と、哲学者萱野稔人(かやのとしひと)氏の対談形式で書かれた、『超マクロ展望世界経済の真実』を読んだ。500年の歴史を遡って、これまでの経済と国家の在り方を、平易な言葉で説明してくれるので、素直に頭に入れることができる。

タイトルから、抜粋します。交易条件(資源価格の高騰)からみた世界資本主義のかたち、景気が良くなっても所得が増えない理由、石油の金融商品化、イラク戦争の真の理由とドル基軸通過体制、基軸通貨をめぐるドルとユーロの闘い、ヘゲモニー(覇権)移転としての資本主義の歴史、金融経済化はヘゲモニー(覇権)のたそがれどき、金融危機はたんなる景気循環のなかの不況ではない、「外部」なき現代の略奪、アメリカのあとにヘゲモニーを握る国はあるか、ルール策定能力としての情報戦、資本主義の特徴はどこにあるのか、経済システムの変更をうながした利子率革命、レーガノミックスはなぜ失敗したのか、ルービンの「強いドル」政策が成功した理由、国際資本の完全移動性がもたらしたもの、なぜ日本のバブルはいち早く80年代に起こったのか。想定されていた前川レポートの内需拡大路線の帰結、日本はいかに生き抜くべきか(極限時代の処方箋)、経済成長モデルの限界と財政赤字、かつてのスペイン帝国も古いシステムに固執して崩壊した。リフレ派の誤り。インフレ時代の終焉、「先進国総デフレ化時代」の到来、日本の銀行が国債を買えなくなる日、人民自由化が財政再建のタイムリミット、円安と円高、どちらにメリットがあるか?、低成長時代の制度設計、規制が新しいマーケットを創出する。知を活かす知的戦略の重要性、低成長時代における国家の役割、規制による豊かさの実現

どのタイトルも、知りたかったことでした。いずれも、歴史的な俯瞰のなかで説明されると、すっきりとしますね。いまの日本の状態は、なぜそうなっているのか、それは過去の出来事と照らし合わせることができるのか、過去にも類似した国家があったのだと理解できました。白川総裁は財政の健全化のために、財政規律一本やりだったが、黒田総裁になって、その真逆戦略に思える大幅な金融緩和(日本を大きな試験場化してしまった、民間企業内部留保も、国家の大盤振舞の結果と思えば、日本国のために使う方法はないのだろうか、成長戦略は前進しているのだろうか、いや。日銀の財政が痛んでいるだけかも)をとっています。国が良くなればいいのですが、トップに立つ人で、こうも違う方向路線を取るのか、とても不思議に思っていました。経済学という学問は、沢山の条件をつけたモデルにおいて、適合するという話をしますが、実経済は、そんな限定された状態にはなっていないのだと思います。(だから、経済学は外れることが多い)

水野さんは、いまのリフレ派とは違うお立場のようです。交易条件を考えると、ドル建ての資源は、円高のほうがよいという話(1バレル100ドル超えると、資源の支払いだけで28兆円にも及ぶようで、安く仕入れたほうがいい。2016年1月13日現在、1バレル30ドルを割ったという事実もある、エネルギーを安く仕入れられるなら、日本経済にはたいへん良い、一方でサウジが赤字になり、中東の不安定を生む)や、人民元が自由化する(あと10-20年位というから2023-2033年位か)前までに、財政の道筋をつけないと、もう悪い方向しかないという。

哲学というとデカルト程度しか読んだことがなかったが、大きな思想的な枠組みを提示できる哲学をつかって、国家の在り方を説明できるものなんだと理解できた。現代は、とくに様々な複合した条件があるなかで、真実がすぐには分からないことが多い。萱野さんの語り口も平易ではあるのだが、こちらに知識がないこともあって、彼の言いたいことを、ほんとうに理解ができているかは、いまの私には分からないという感じが残った。(正直、ここは勉強不足)

参考:高橋洋一氏の意見
「お札を刷って国の借金帳消し」ははたして可能か

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